自分でできる予防Ⅱ - 心の安定を得るために -
敵を知り己を知る1
新型コロナウイルス感染症について連日のようにマスコミによる悲観的、危機的報道が続いていますが、このことがどのくらい一般の人々の精神的不安を煽っているか、また、心の不安が感染発症の素地になりかねないか、発病した場合に治り難くしかねないか、マスコミ関係者(医療の専門家、解説者、ニュースキャスター)のどのくらいの人が考えているでしょうか。考慮している人はほとんどいないようです。伝統医学では全ての病気の原因の根底に心の不安があると考え、心が安定していればどんな病気にも罹らないという教えがあります(伝統医学の原典)。
この感染症に関してマスコミは全てを正しく正確に報道をしているかというと、否です。楽観的とは言えないまでも人を安心させる情報もあるにもかかわらず、伝わってこないからです。両者の考え方を平等に伝える義務と責任があるにもかかわらず偏った報道しかしていないと言えます。マスコミの使命は、一般大衆が目に見えない敵に“恐れ慄き右往左往”させることではなく、“正しく畏れ冷静沈着”な判断と行動ができるようにすることであるはずです。マスコミの報道は敵を正確に知らせているとは言えません。
心の安定を得るためには、新型コロナウイルス感染症に対する偏りのない正しい正確な知識を持つこと(敵を知る)が大事です。次に、自分の中にある力(自然良能≒生体防御)を正確に知り(己を知る)、それを信じることです。
今回は敵を知ることから述べます。
1.敵を知る(新型コロナウイルス感染症について)
1)伝統医学の知識
新型コロナウイルス感染症は、文字通りこのウイルスが原因で発症した病気であることは間違いないのですが、伝統医学ではそれ以外に別の観点から原因を捉えます。それは天気(てんのき)との関係です。この病気の原因の邪気は何かと言うこと、どのような気象条件で発症するかという点です。
天気は本来万物の命(イノチ)を養い育むもので、風・寒・暑・湿・燥・火の六つの気に分類されます。これが季節ごとにバランス良く配剤されていれば良いのですが、ある気が多すぎたり、少なすぎたりすることによって邪気(六淫)となり病因になります。この場合は寒邪と燥邪とが多いことで発症したと考えます(湖北省武漢で12月発生)。
世界的に異常気象が続いていることが常態となって久しいですが、今年の3月から4月までの日本の天候を見れば一目瞭然で、3月の初めに夏のような暑さが続いて桜が早咲きしたかと思うと、3月末には雪が降り、4月に入っても寒暖の差が激しい。このような時は、感染が蔓延しやすく、個人においてはなかなか治り難かったり悪性化したりします。
WHOによるパンデミック宣言が3月になされましたが、これも天気が大いに関係していると私は考えています。特に欧米では感染率や致死率が高いですが、寒さと乾燥に加えさらに環境汚染(PM2.5等)があるようです。
2002年11月に広東省で発症したSARS(サーズ;重症急性呼吸器症候群)は7月(5日、台湾の患者が最後)に終息、その理由は不明とのことです。しかし、伝統医学的には季節が変わり、寒から暑に、燥から湿に移ったことによりウイルスの活動が不活発になった結果であると見ることができます。
2)現行医学(生物学)の知識
① 新型コロナウイルスの特徴
- 天候では摂氏22.22(華氏72)度以上、湿度50%以上では活動が大幅に鈍るとアメリカの感染症関係の研究機関で報告されています。また、室内も同じ条件に保つと良いようです。ストーブ、加湿器はまだしまえません。空気清浄機があればさらに予防対策になります。
- 空気中の新型コロナは暗い室内で1時間かけて威力が半減したのに対し、日光に当てた場合は90秒に短縮したという米政府研究の報告がNewsweek誌(4/24)に掲載
- アルコール、熱湯(80℃×10分)その他消毒液に弱く、紫外線(200~400nm)では殺菌可能です。
- 新型コロナウイルスの寿命は空気中で3時間、固形物の表面4時間(銅の表面)から最大3日間(ステンレスの表面)であるという結果をアメリカの研究機関が発表しています(米AFP)。
- あまり知られていないのが、風邪の10~15%(流行期は35%)を占める原因ウイルスがこの仲間のコロナウイルスということです。だから風邪と同じ様な症状を表すわけですし、侮ってはいけませんが、日本において感染の8割は軽症です。重症者のほとんどが70歳以上の高齢者ということです。また、サーズ(SARS;急性重症性肺炎)と比較すると致死率(2%前後)は比較的低いようです。
- 今回のウイルスの終息は、前回流行したサーズ(SARS:2002.11.16~2003.7.5))を前提にすると170日くらいであると、『感染症の世界史』の著者である石弘之氏は予想しています。
② ウイルス一般の特徴
- ウイルスは自分自身で増殖できないので寄生することで増えます。従って、宿主が必要。宿主を殺しては増え続けることができないから、適当なところで共存共栄を図るウイルスが多いそうです。
- 無生物と生物の両方の性質を有していて、外界(天候や環境)の影響を受けやすく、例えば、温度と湿度に強い弱いはウイルスの種類によって違うようです。
- ウイルスの基本構造はDNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)のいずれか一つの遺伝子とそれを包む殻(カㇷ゚シド)から成り、これをヌクレオカプシドと言います。高等なウイルスになるとさらに外側に脂質でできた膜を持ち、エンベロープと言います。これにはスパイク状のたんぱく質が付いていて、宿主(人や動物)の細胞に侵入するとき重要な役割をします。新型コロナウイルスのコロナとはギリシャ語で王冠という意味ですが、これがスパイク状のたんぱく質に相当します。
- 単純な構造であることから、変異(変身:メタモルフォゼ)しやすいので、宿主に一端免疫ができてもまた変異することにより終生免役になり難いので、宿主にとっては厄介な存在です。毎年ワクチンを打っても、インフルエンザにかかる人がいますが、この性質によります。
- このようにワクチン接種をしてもウイルスは変異してしまいます。これは抗生物質と細菌の関係に似ています。はじめのうちは抗生物質が効いてもすぐに耐性菌ができ、これが繰り返されます。同じように、消毒や抗ウイルス剤等で攻撃を受けるとウイルスはさらに強い毒性を持つように変異する可能性が高くなります。
- ウイルスの大きさ:約20~300nm(0.02~0.3μm)で、精度の高い電子顕微鏡でなくては見ることができません。因みに新型コロナウイルスの大きさは0.1μmですから、1ミリの一万分の一の大きさです。重さは今の段階では分かりませんが、非常に軽いので可視化されている物の物理法則は成り立たないのではないかと考えます。
- 今行っている検査法はPCR法(ポリメラーゼチェーンリアクション;遺伝子増幅による)ですが、それ以外に、電子顕微鏡による直接法、抗原抗体反応を利用した検出法があるそうです。
- ウイルス等の微生物は40億年前から地球上に生きていますが、人類はせいぜい400万年前に誕生(アウストラロピテクス)したわけですから彼らのほうが大先輩です。また、人の身体には何万種類、百兆個以上の常在菌と言われる微生物が生活していて人の役に立っていると、石弘之氏は言っています。
また、ヒトゲノム(人間の遺伝情報)の45%は“ウイルス”あるいは“ウイルスのようなもの”で構成され、ウイルスがいたからこそここまで進化できたと神戸大学教授の中屋敷均氏は言っています。
以上、ウイルスの特徴について述べましたが、それは敵であるウイルスを正しく正確に知ることによって、マスコミの一方的な報道に対して冷静沈着な判断と行動をしていただきたいという願いからです。お役に立てば幸いです。
感染症の歴史を研究している石氏によると人類の歴史の中で病原微生物による感染症に勝利したのは天然痘くらいで、勝敗は1勝9敗だそうです。孫子の兵法の究極の戦略は“戦わずして勝つ”ですが、ウイルスとはいかに負けないで共存共栄を図るかではないかと私は考えています。そのためには、ウイルスを殲滅することばかりを考えるのではなく、己の力を知りその力をさらに高めることだと考えます。
次回は“己を知る”ことをテーマにします。