伝統療法による新型コロナウイルス感染症予防

新型コロナウイルスは去年の12月、中国武漢で発症し、中国人の大移動により日本をはじめとするアジア、ヨーロッパ、アメリカなど全世界に広まり3月にはWHOがパンデミック宣言をだす事態に至りました。
日本では3月中旬までは千人に満たない数でありましたが、徐々に増えて4月前後に急激に増え、東京都では4/9現在1,519人に達し、今後ますます増える様相を呈しています。
このような事態から、不要不急の外出の自粛が政府及び東京都知事（3/31）から報道されたことは最もではありますが、その不要の内容は本来、感染者の家族などを対象にしていたものでした。それが段々と広がり、三密（密閉・密集・密接）が言われるようになり、飲食店、娯楽施設等、具体的な場所も問題視されるようになました。さらには、個々人の判断に委ねられて行き、その結果、鍼灸治療所等の医療の一翼を担う施設も自粛の対象となりつつあります。4/7に緊急事態宣言が政府から発令され、さらなる自粛の強化、強制的な措置がいろいろ取られています。これにより更に鍼灸治療への足が遠のいてきています。
このような状況に鑑み、鍼灸按摩をはじめ、養生法、漢方等の伝統医療には、感染症予防に十分対処できる考え方と方法があることを社会に訴える必要性を感じた次第です。今回は鍼灸治療に来られている患者さんを対象に伝統医療の意味と意義、そしてその方法をお伝えしたいと思います。これがさらには、厚労省、医療関係者、有識者、及び一般の方々が伝統医療を見直す機会になれば有り難い限りです。

１．伝統医療による感染予防の概要

１）自分でできる予防

①日常生活の改善

厚労省の個人向けの心得の中に、適度の睡眠、バランスのとれた食事を心がけて免疫力を高めておくという内容がありますが、これは尤もなことです。しかし、これでは足りません。伝統医学の予防（養生）法では、二便（大便、小便）が快調か、正しい呼吸（調息）、正しい姿勢・動作（調身）、正しい運動ができているかどうか、そうして最も大事なことは心の安定（調心）が図られているかどうかということです。
この中でどこが良くないかを自己判断して改善できれば、病気予防と健康維持が約束され、その一つである免疫力も高まるのです。

②感染防御

次に、手洗いやマスクの着用の薦めがあります。これも尤もなことですが、ウイルスの量、大きさ（0.1ミクロン）、性質を考えれば当然うがいや洗面（ウイルスは目からも入ります）も重要になります。
マスクをしていても通常のもの（5ミクロン）であれば、ウイルスはその網目から通り抜け鼻や口へ侵入します。防塵マスクと同様な高性能マスク以外はウイルスの侵入を防ぐことはできないと厚労省（政府）も指摘しています。
感染者が他人に移さないエチケットとして着用するなら意味があるとも言われています。飛沫はマスクの網目を通過しにくいからです。また、自分が不顕性感染者であるかどうか疑わしい場合にも、マナーとしてマスクの着用は意味があります。
もう一つマスクを適切につけているかどうかが重要となりますが、電車の中などで観察していると正しくマスクを着用している人が非常に少ないことも事実です。大きいことはいいことのような発想でつけているしている人もいれば、隙間だらけでつけている人もいて、多分に着けていれば安心という気持ち（心理）が強いように見受けられます。もちろん心理効果は心の安定につながることですから、これも予防にはなります。

③外部環境

居住空間上の注意事項として、3番目に適度な湿度（50～60％）を保つことの重要性が指摘されていますが、これも尤もなことです。しかし、これだけでは不十分で、やはり適切な温度と空調です。
また、気候の変動に敏感に対処することが大事です。寒温の差など天気の急変に対応しないと風邪を引いたり、新型コロナウイルス感染症にも罹りかねません。

④運動手技療法（導引按蹻）

自己按摩によって新型コロナウイルス等の感染症予防、健康維持が可能ですが、あまり知られていません。また、気功、太極拳でも同様に可能で、この場合は更に健康増進にも役立ちます。しかし、これも知らない人が多いです。
前者では、主として気血の流れを順調にすることによって、予防と健康状態を保持できます。後者によって、先ほど挙げた正しい呼吸、正しい姿勢・動作、正しい運動、心の安定の全てが身につけば、予防も健康維持も増進も可能となります。

２）鍼灸按摩治療による予防

鍼灸按摩等の治療により、心身の弱点を除き、体のアンバランスを整え、呼吸器系統の不調部分を整えることで、気血の流れが順調かつ活発化（円滑な新陳代謝）します。その結果、病気予防と健康維持になりますから、当然新型コロナウイルス感染の予防につながりなります。

令和2年4月10日
蓬治療所所長　戸ケ崎 正男